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企業の経営理念の作り方と社内に浸透させる方法

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企業の経営理念の作り方と社内に浸透させる方法

 

そもそも経営理念とは何か?

経営理念とは何でしょうか? 思想と哲学

言葉の定義や解釈は、人によって違ったりもしますが、 私自身は、「会社の存在意義や経営目的をあらわした思想や哲学」であると解釈しています。

理念の中に、なぜそのビジネスをしているのかという理由や目的が記されており、ビジネスモデルや戦略は、一定の価値観に則って記されている必要があります。

企業活動や組織運営は、目的に応じた目標を見出し、それらを達成するための実践が求められます。そして、その実践のプロセスの中で、思想や哲学に「一体感」や「一貫性」が醸成されて行きます。

経営理念とは、企業の思想や哲学に「一体感」や「一貫性」を生み出す源泉となり、原動力になるものであると考えています。  

「経営理念」というのは、「経営」に関する考え方や価値観を表したものですが、そのベースとなるのは経営者自身の思想や哲学です。

社訓、社是や行動指針、クレドなどとの違いについても、定義や解釈は諸説ありますが、一般的には、理念とは広い意味での思想や哲学であり、それ以外のものは、憲法や法律、またはルールなどを具体的に示した狭義の指針や基準となります。

いずれにせよ、こうした言葉の定義や解釈に左右されることなく、それぞれの会社ごとにオリジナルの理念を自由につくる姿勢。それこそが肝心なのです。  

 

経営理念は必要なのか?

私は、役員になってすぐに為すべきことに悩み始め、そこから経営に関する様々なことを手当たり次第に学んでいきました。そうした中、ある時「理念経営」について学ぶ機会を得たのです。

ですが、正直なところ「理念」について学んだものの、初めはイマイチ、ピンとはきませんでした。わが社は、私が役員になった頃、まもなく創業60周年を迎えようとしている企業でした。

しかしながら、我が社はその歴史とは裏腹に、社是や社訓はもとより、創業理念や企業理念など、文字に起こされた共通言語など何も持たない会社だったのです。それでも一定の利益は出し続けていましたので、はっきり言えば、その頃は「理念」などは必要ないと思っていました。  

利益結局は「利益」。 企業においては、「利益」に結びつく効率的、且つ効果的な活動こそがすべてである。

私は、そう信じて疑っていませんでした。ですから、理念をつくり、整備することで利益が上がるという話を聞いた時、「そんなことぐらいで、本当に成果につながるものなのか?」と、頭の中はクエスチョンマークで一杯でした。

むしろ、「理念を作ったぐらいで会社の業績が上がるはずがない!」と、理念に対しては否定的で、あまり意味のないことのように思っていました。

社会に出る前、学校には、校訓がありました。しかし、はっきり言って覚えていません。 唱和させられていた記憶はうっすらとありますが、それだけです。 私が営業時代に、関わりのあった多くの企業さんにも、理念らしきものはありました。中には、社歌まで作っている会社もありました。

しかし、どこの会社も、何もかもがお題目だったようにしか思えませんでした。念仏を唱えるがごとく、理念の中身について深く考えることもなければ、よくわからないという社員さんが大半であったような印象しかなかったのです。

「果たして、こんなお経を唱えて利益が出るのだろうか?」
「そもそも、他所の会社でうまく出来ないことを、うちの会社だけが実現できるのだろうか?」
「いや、甚だ疑問である・・・。」
率直なところ、私はそう思っていたのです。

それに、「理念経営」という言葉を知った頃の私の立場は取締役部長。 社長でもない今の自分の立場で、理念をつくり、そして、それを浸透化させることができるとは到底思えなかったのです。

そもそも私自身が、有難い言葉や説教臭い話を面倒くさいと感じるのに、果たして、それを社員が受け入れてくれるのか疑問でした。そんな気持ちや考えが、私の行動にブレーキをかけたのです。   

湧き水しかしながら、そこから時間をかけて色々と学び、悩み、そして考えた末、理念とは、「社風をつくる源泉である」という結論に至ったのです。そして、この社風こそが利益を生み出して行くのだと理解したのです。

振り返ってみれば、当時、特に素晴らしい社風のある会社とは出会っていませんでした。心の底から楽しそうに、幸せそうに働く人にも、ほぼ知り合うことがなかったように思います。つまり、理念のおかげで成果を出していると思えるような企業があるとは到底思えなかったのです。

しかし、理念を経営に活かすという観点で調べていくと、理念により社風を変え利益を生み出している会社は世の中に幾つも存在していたのです。

実際、私の小さな行動範囲の中では存在していなかっただけで、理念を活かしている企業がたくさんあることを知ったのです。その事実を知った時、私の会社もそのような会社にすると心に決めました。  

理念は、会社の「あり方」を決めます。それを基準として、組織内のメンバーそれぞれの判断基準が決まります。会社の「あり方」を実現させるための行動、つまり、「やり方」が生まれてくるのです。

結果、指示やコントロールによる押しつけや強制力から開放され、自発的に考え行動する社員が育っていきました。理念が浸透することで「自立型社員」の育成に繋がったのです。 そして、「自立型社員」が増え、組織力が上がった結果、利益にも繋がったのです。

 

経営理念が社内に浸透しない最大の理由

  私が目指す究極の経営者の姿は、「文鎮のような人」です。 「文鎮のような人」とは、ブレない人のことです。 bunchin

人としての姿やあり方も同じです。信念をもって揺るがず、ただそこにいるだけの人かもしれませんが、大きな役割を果たす人です。迷った人や困っている人を元の道に戻し、また、原点回帰させてくれるありがたい存在。

迷っている人は、大抵の場合、目的や道理を見失っています。 だからこそ、私は、理念のことをずっと考え続けてきました。

理念に照らし合わせ、自分自身のあり方を考え続けてもきました。 自らの意志を言葉に換え、経営理念として掲げ、ずっとそこを見つめ、実践し、その上で、さらに考え続けてきました。

結果、言葉尻や表現を少しずつ変え、過去に何度かはマイナーチェンジもしていますが、 フルモデルチェンジはありません。 大事にしたいコアとなる価値観は、そうたやすく変わるものではないからです。 しかし、大きく変わる時には変わっても構わないとも思います。

なぜなら、それは経営者自身の成長度に従って変化するものだからです。 そして、これだけ経営理念について考え続けてきた結果、今、ようやく自分自身がその重要性を理解することができたように感じています。つまり、腹落ちしたということです。  

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師) アメリカ人公民権運動の指導者として活動し、ノーベル平和賞受賞者。「I Have a Dream」(私には夢がある)のスピーチで知られ、その活動は広く人々の共感を呼んだ。

私は、経営上で大事にする中核となる考えや想いを、社長自身がしっかりと発信すべきだと思っています。 もちろん、エゴや私心からの発信では会社は成り立ちません。

エゴや私心を満たす言葉を経営理念と称して並べ立てたとしても、全く価値や意味はありません。どんな理念や言葉であっても、会社が掲げるものが意図するものは、最終的に行き着く先が、誰かの「お役に立つ」ということでしかありえないのです。

ならば、どんなかたちで「お役に立つ」のか。 それを経営者自身が考え、そして示したものが経営理念です。

私自身がそうであったように、最初は、あまりピンとこないかもしれません。まずは、自分の思いを言葉に換えて、それらを、時間をかけて考え続けることによって研ぎ澄ませていくのです。

それは、いずれ必ず自分自身の「あり方」とリンクしていきます。 理念経営の本質は、ここにあるのではないかと思うのです。

つまり、社長の腹落ちと人間的な成長のため。 社員のため、会社のためというよりは、まずは、社長自身の「あり方」を整えるために必要なもの。 経営トップがそこに向き合い、実践することによって「知行合一」が実践されていきます。

知っている、わかっているだけではなく、実践してはじめてリーダーシップが発揮され、理念の社内浸透が促されていきます。   耳が痛い話ですが、お題目にしているのは、他ならぬ社長自身です。 社長自身の覚悟が足りていないわけです。 要は、社長自身が向き合っていないから浸透しないだけなのです。 これこそが、経営理念が社内に浸透しない最大の理由です。

 

経営理念のつくり方と手順および注意するべき3つのポイント

  経営理念を通して、会社の「あり方」や「やり方」を明文化していきます。 その際、人や会社に個性があるように、理念にも個性があって構いません。

個人的には、誰かの「お役に立つ」という大前提が守られていれば、どんな方法でつくってもかまわないとさえ思っていますが、一応、私なりに考える、経営理念のつくり方のコツやポイントを簡単にご紹介したいと思います。   まずは、明文化する際に共有しやすく、浸透しやすい体裁を整えることです。

そのために、  

ポイント1:簡潔に表現する

経営理念は、簡潔に表現することが有効です。 必ずしも短い言葉にする必要はありませんが、なるべくシンプルさやわかりやすさを心掛けた方が伝わりやすく、浸透しやすいと言えます。  

ポイント2:切り口で考える

【MVV】というのは、MISION(ミッション:使命)・VISION(ビジョン:展望)・VALUE(バリュー:価値観)の頭文字をとったものですが、これらの切り口で考えるとまとめやすくなります。

何をなすべきか、何をするために自分たちの能力を活用するのか、どんな会社にしたいのか、どんな人でいたいのか、どんな働き方をしたいのか、どんなことを大事にしたいのか、などを考え、そして明文化して行きます。    

ポイント3:「らしさ」を求める

言葉づかいや語調には会社の性格や姿勢を反映させることが浸透させるために効果のあることかと思います。 すでに持っている強みや長所、なんとなく多く使っている言葉など、その組織の「らしさ」探して使ってみることも有効です。

 

経営理念を社内に浸透させる3つの方法(ステップ)

  mokuteki社員の仕事における責任は、目の前にある実務を理念に則って行うことで果たされていきます。 それが理想です。

すべての社員が行う仕事、つまり、作業やタスクは、この理念を全うするために存在していると言っても過言ではないのかもしれません。

理念を通して、「何のために自分のタスクや作業があるのか」という目的を明確にして、全体の成果に目を向けるように理解してもらい、社内の意識改革を行っていくことが重要なことです。

まずは、この目的意識をもつことが、組織内に理念を浸透させて行く基礎となります。   ならば、組織内で、より大きな影響力をもつ人がその目的意識を強く持つことで、より大きな効果を得ることができるということになります。

したがって、まずは、組織を代表する立場である人が、しっかり理解している必要があるということになります。 つまり、社員のみんなに理解してもらえるように立ち回り、さらに、実践してもらえるように努め続けることが、経営者の責任なのです。その意味で社長自身が、いわば、「MR.経営理念」でいなければならないと思います。

理念をつくれば終わりというわけではありません。とはいえ、社長だって人間です。 神様仏様ではありません。 理念構築し、明文化できたとしても、意志が続かず、運用がうまくいかないことは普通にあります。壁にぶち当たり、さらにそこでまた悩むわけです。 その繰り返し。 浸透化させるのは時間がかかります。 それを仕組みや仕掛けで補うのです。 ということで、理念浸透のやり方のポイントを3つあげておきます。  

 

ステップ1:アウトプットを増やす

mic社長自身、常に文字でも口頭でも発信し続けることが大事です。意図や目的、そして、そこに紐づいた具体的な行動事例などを、なぜ、何の為にということとワンセットで発信し続けたいところです。

また、同様に社員さんたちにも発信してもらうことです。 よくあるパターンが唱和することです。 始めはイヤイヤかもしれませんが、ポスターやクレドブック、小冊子などのツールを活用し、朝礼時に唱和したり、自らの考えを述べたりしてもらうなど、理念に触れる機会とアウトプットする機会を多く社内に設けていくことが有効です。

大事なことは、ただの念仏にするのではなく、意味を考えてもらうような設えにすることです。 始めのイヤイヤも、いずれ慣れます。  

 

ステップ2:社内の意見を広く集め、意思決定に参画してもらう

hanashiai理念が経営トップや経営陣が考えたものであっても、行動指針やクレドなど、理念よりも下位概念の制作に携わってもらうことが有効です。

管理者や一般社員にも広く意見を求めるなどして、全社員が作成に関わったという意識を持てるような工夫が大切です。

理念は、あくまで経営者、またはそこに準ずる役割の人がつくった方が良いかと思いますが、実行レベルでの指針は、組織内の多くのメンバーに関わってもらう設えが浸透させるために有効な手段となります。

他人事には無関心になりがちですが、自分事になれば、主体性が生まれやすくなります。つまり、意志決定の場に参画してもらうことで協働意識を育むということです。  

 

ステップ3:評価に反映させる

評価制度や目標管理制度で、理念を元に、情意目標などのいわゆる「働き方」の基準や目標を設定し、それに対する評価を行うことです。

理念行動や理念に基づいた具体的なアクションプランを立ててもらうことで、より強い意識付けがなされるようになります。日々の業務の中で、実際に理念に則した行動が取れるように育成し、マネジメントすることで浸透化が促されます。

また、具体的な社員の理念行動をピックアップし、それを奨励して行くことです。 これは、投票制度や表彰制度などをつくって朝礼時などに褒賞したり、社内報などを活用したりするなど理念行動を紹介して行きます。

理念行動について共に考え、共有する時間をつくり、自らの言葉や意思として表明する時間をつくることや、お互いを承認し合うことで浸透を促します。  

 

まとめ

経営理念をつくる際に大事なことは、「つくり方」よりも、「考え方」です。 体裁を整えるよりも、何を大事にするのかという中身を重視したいところです。

また、経営の「やり方」よりも、会社の「あり方」を重視しなくてはいけません。 会社の「あり方」とそこで働く人たちの「あり方」を明文化することです。 「どのようにして儲けるのか」ということではなく、「どのようにしてお役にたつのか」ということが主体です。  

最後に、これが本当は、一番大事なことなのですが、経営理念をつくり、そして浸透させる仕組みをつくったら、しっかりと運用を継続し、習慣化することです。

action継続は力なり! つくれば終わりではありません。 要は、やり続けることです。 つまり、根性! 簡単に止めない! すぐに心折れない! まずは、経営者やリーダーたちが諦めないことです。

そのためには、まずは、社長自身の向き合う勇気と覚悟が必要です。 動き始めたときには、必ず起こる社内の摩擦や軋轢があります。

その社内の抵抗勢力に屈せず、いかに仲間にしていくことができるのか。 理念が浸透してくると、抵抗勢力は抵抗をやめ協力するか、自然代謝が始まるか、どちらにしても価値観共有が進んで行きます。また、採用も理念に基づいて行うことができるようになり、すべての企業活動において「一貫性」が構築されていきます。

  michinori「一貫性」という面において考えれば、社内人事においても同じことが言えるかと思います。 組織内の各リーダーの役割として求められる大事なこととは何でしょうか? 売れればいい、作業できればいい、というのでは単なるプレイヤーに過ぎません。

経営幹部をはじめとした役職者やリーダー、マネージャーに求められる重要なことのひとつに、理念の理解度と実践度があげられます。つまり、理念を体現し、実践できる人こそが、組織の重要なポストを担うべきです。

経営トップをはじめとして、組織をけん引するコアメンバーの「あり方」の実践こそが組織風土に「一貫性」と「一体感」をもたらし、強い組織をつくって行きます。 結果、組織に成果をもたらすことになるのです。  

 

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