人材育成

「自立」と「自律」の関係性

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自立と自律

「自立」と「自律」の違い

「将来的に、一人暮らしして【ジリツ】したいです。」

「あなたは、能力のある人なんだから、いつまでも会社に頼らず【ジリツ】すべきだよ!」

「甘えるんじゃありません!もっと大人として【ジリツ】しなさい!」

「我々は、組織人としてきちんと【ジリツ】すべきです。」

「私、実は、【ジリツ】神経失調症なんです・・・」

 

【ジリツ】する。

jiritsu&jiritsu普段、何気なく使っている言葉ですが、ご存知の通り、【ジリツ】には、よく使う言葉として「自立」と「自律」の2つがあります。これらの2つの言葉ですが、違いを意識して使っていますか?

ま、どうでもいいといえば、どうでもいいことなのかもしれませんが、私も、経営者として、またコンサルタントとして、立場的に【ジリツ】という言葉をよく使っていますので、今回は、あえてこの【ジリツ】をテーマに、考えてみたいと思います。

「おー、この人は大人だな~」「社会人として立派な人だな~」と感じる人。接していて、そんな風に感じる人は、大抵の場合、私が思うに【ジリツ】している人が多いです。では、そのような人たちには、どっちの漢字を使うのかと言われれば、実はどちらも当てはまるわけです。

「自律」している人は「自立」しているし、「自立」している人は、「自律」しているのです。ということは、どちらも同じ意味であるということなのでしょうか。そう言われれば、そうかもしれませんし、そうじゃないと言えばそうじゃありません。

なんじゃそりゃ!とツッコミを入れられてしまいそうですが、ネット上でも、この「自立」と「自律」の違いを論じている人はたくさんいて、読んでみるとそれぞれに主張が微妙に異なります。人それぞれで解釈が異なり、総論、各論、視点によっても変わるのです。

なので、今回は、私の独断と偏見により、いや、まー、多少の根拠は引用しつつ、私なりに定義して行きたいと思いますので、たとえ、そうじゃないよと思ったとしても、不幸の手紙などは送らないように悪しからずご容赦ください。

さて、私のこの持論でいけば、実はウダウダとした長文説明は、ほぼ要らなくなります。ズバリ、一言で解決するのです!

とはいえ、今すぐにそれをしてしまうと、始まったばかりで、もう終わってしまうことになってしまいますので、あえて「ズバリ」に至った背景をもったいぶりながら、ウダウダと引っ張りつつ書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします(笑)

controlledさて、それぞれの言葉がそもそも持つ意味ですが、使い方を考えてみると、「自分を律する」とは言いますが、「自分を立する」とは言いません。つまり、そもそも「立する」なんて言葉はないのですが、要するに、自分で立つ、つまり、「自立」には、独り立ちする、独立するという意味があるということになります。

また、「律する」には、管理したり、ルール化するという意味がありますので、「自分を律している人」となると、自分をコントロールすることのできる大人な人というイメージを持つわけです。こうやって考えてみると、少しずつ言葉の持つ意味の違いが見えてきた気がします。

 

■「自立」とは読んで字のごとし、自ら立つことである。

つまり、どこかの誰かや何かに寄っかからずに、ひとり立ちすることである。

■「自律」とは読んで字のごとし、自ら律することである。

つまり、自らルールや掟をこしらえて、それに従うことである。

以上!おしまい!

と言いたいところですが、とはいえ、ひとまず、権威的な後ろ盾といいますか、きちんとした根拠がほしいので、辞書のお世話になろうと思います。

 

まず、「自立」の意味を調べますと、

他への従属から離れて、独り立ちすること。独立。他からの支配や助力を受けずに存在すること

とあり、「自律」は、

他からの支配や制約を受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること

とありました。

違いが、何となくわかりました?

存在と行動「他からの支配や助力を受けずに」「他からの支配や制約を受けずに」というところは、どちらも完全に言葉がかぶっていますね。ま、ほぼ同じ意味として考えても大丈夫でしょう。明らかな違いは、「独立」と「規範」でしょうか。

また、述語に使われている「存在すること」と「行動すること」も明確に違いますので、ここは特筆すべきところかと思います。この違いは重要なところですから、頭の片隅に置いておいてくださいね。

次章では、もう少し詳しく、言葉の持つ意味を考えてみたいと思います。

 

「自立」と「自律」の意味

さらに詳しく理解するということで、対義語も見てみましょう。

「自立」の反対は、「依存」、「自律」の反対は「他律」。
おー、なんかさらに見えてきた気がしますね!

ん? ちょっと待てよ・・・ 

「依存」とは、

他に頼って存在、または生活すること

を指しますが、「他律」ってのは、何でしょうか?
あまり聞きなれない言葉です。なので、ちょいと「他律」を辞書で引いてみます。

すると、「他律」とは、

自らの意識によらず、他からの命令や強制によって行動すること

とありました。

どうやら、「依存」と「他律」の違いは、「命令」や「強制」という言葉がキーワードになるようです。違いはそこにあるようですが、いまいち、まだ十分な理解には及びません。

英語ではそれぞれどのように訳するのでしょうか。

■自立=independence

【in-】  否定  【-dependence】  頼る、依存

■自律=autonomy

【auto-】  「自身の」「独自の」「自己の」  【-nomy】  「…学」「…法」

・・・で?

ん~、まだよくわかりませんね。もう少し調べてみましょう。

 

■自立=self-reliance 

【reliance】  
1. 信頼,信用,信任  
2.〔物事に〕頼ること,当てにすること

■自律=self-controlled

【control】  
1.  支配(すること), 取り締まり,管理,監督,管制 
2.抑制(力), 制御; 統制,規制

ほほ~ なるほど~ わかってきたぞ!というわけで、まとめてみましょう。

 

■「自立」とは、他に頼ることなく、自分自身が信じ頼れる存在であること

■「自律」とは、他から支配されることなく、自分自身が支配、統制すること

ねっ! どうですか!? 
え!? まだよくわからない?

むむむ・・・

 

社会における「ジリツ」

izon一般的に社会において「ジリツ」している人といえば、親や自分以外の誰かから扶養されずに、自らの収入によって生活している人を指します。つまり、経済的に「ジリツ」している人ということになります。

こういう場合、通常は、「自立」と書きますが、「自活」とも言いますよね。他人の援助を受けず、自分の力で生活することのできる生活力のある人ということですね。現代社会では、フリーターや非正規雇用など、所得の低さから親元を離れることのできない人も多く存在します。ですので、生活保護を受けていたり、親の脛をかじっているようでは「自立」しているとは言えないでしょう。

また、そのように「自立」していない人でも、20歳を過ぎて成人すれば、法律的には大人として認められるわけですし、20歳になっていなくても、学生ではなく、働いていれば、社会人と言われます。ですので、ストレートに、「自立」している人=大人・社会人、ということにはなりません。

経済的に「自立」している人であっても、他の面で「自立」していない人はいます。たとえば、問題解決力が低く、すぐにパニックを起こしたり、問題が起こると無責任にすぐ逃げてしまう人や、世間体ばかりを気にして自信を持てない人、はたまた、友達や恋人との関係性を失うことにいつも怯えている人や、すぐにお酒や薬に頼ってしまう人など、いつも誰かや何かの存在、力ばかりに頼る人は、精神的に「自立」できているとは言えません。

つまり、前章でまとめたように、【他に頼ることなく、自分自身が信じ頼れる存在であること】という「自立」の定義に反しているというわけです。精神的に「自立」できている人は、大人だなと感じます。

そのような人は、【他から支配されることなく、自分自身が支配、統制すること】という「自律」の定義をも全うしています。つまり、セルフコントロールができているのです。

自らを律して心が強い人は、強い意思をもって行動を生み出すことができるため、より良い結果を生み出しているように思います。ですので、自信をもっていて、さらに人間的にも魅力があるように感じるわけです。まさに、結果として、「自立」の定義を全うしているのです。

「自律」した結果としての「自立」。ここにひとつ「自律」と「自立」の関係性を垣間見ることができます。

 

会社組織における「ジリツ」

組織やシステム的に「ジリツ」していると言うと、自らの現在や未来を決める要素が、その内部に存在し、たとえ外部の影響を受けたとしても、内的に完結しながら自己サイクルを回し続けられている状態にあることを指します。つまり、内部統制が取れている状態です。この状態を示す言葉としては、「自律」が適当かと思います。

ただ、会社も組織ですが、一般的には、【会社が「ジリツ」している】とはあまり言いません。強いて言うならば、本体から切り離して、独立採算制にするなどの意味で、「独立」と同義で用いるかもしれませんが、この場合の意味としては、「自立」という漢字が当てはまります。

しっかりと管理されて統制が取れている組織。リーダーや経営者ならば、いわば望む理想のかたちと言えるかもしれません。しかし、私も経営者の端くれですが、私自身は、その状態を目指して会社経営をしていません。

強制なぜなら、組織全体の管理や統制を無理に進めると、個の主体性が削がれ、依存が進んでしまうからです。ですので、むしろ逆の状態を目指しているのです。

つまり、機械の一部や歯車のような働き方を強いられるのではなく、個の主体性が発揮され、自ら考え自ら行動できるように、ある意味で、自由を感じられるような環境を構築したいと思っています。

「主体性」とは、自分の意志や判断で行動しようとする姿勢や態度のことです。個々のメンバーによるこの姿勢によって自然調和的に生まれる一体感やチームワークは、意図的な統制によって生まれるものとは明らかに結束力の強さが異なります。

英語の意味で解釈するならば、前述の「自立」を意味する「independence」も「自律」を意味する「autonomy」も、どちらも「主体性」を表す言葉として同様に扱われます。つまり、英語的な解釈でいえば、「自律」した人も、「自立」した人もどちらも「主体性」を持っているということになります。

ですが、前述したように、強制的に「自律」を促すと、なぜか「依存」が進むことになってしまいます。主体性が削がれ、行動は生まれなくなります。つまり、「他律」を促すと「自立」が阻害されてしまうのです。

これが「自律」と「自立」の関係性です。この関係性を別の言葉に置き換えるならば、「手段」と「目的」、または、「プロセス」(原因)と「結果」の関係に近いということができるかもしれません。

会社組織内における個々のメンバーの「ジリツ」、つまり、「主体性」によって、会社の「ジリツ」は促されて行きます。外側からのコントロールによることなく、組織を構成する個々のメンバーそれぞれの内側から起こる自らの意思やコントロールによってのみ、会社の「ジリツ」は促されてゆくのです。

 

「ジリツ」の正体

前章を踏まえて、私なりに結論付けるならば、

【「自立」と「自律」の関係性は、「あり方」と「やり方」の関係性に等しい】

ということになります。

冒頭にすでに出てきたのですが、その根拠として、辞書からの引用通り、「存在」と「行動」の違いがあげられます。「自立」が「存在」、つまり、「あり方」を表し、「自律」が「行動」、つまり、「やり方」を表します。

「自立」と「自律」の関係性は、まるで、「リーダーシップ」と「マネジメント」の関係性そのものです。リーダーシップとマネジメントの違いを『7つの習慣』のコヴィー博士は、以下のように説明してくれています。

ざっくりと言えば、「リーダーシップ」とは、どちらの方向に向かって進むのかという方向性を指し示すことであり、「マネジメント」とは、その指し示された方向に向かって、能率・効率よく、管理・コントロールしていくことを指します。

また、お互いの関係性は、コンパスと時計にたとえることもできます。「リーダーシップ」はコンパスを表し、「マネジメント」は時計を表すのです。

つまり、「自立」するということは、コンパスを手に入れることであり、「自律」するということは、時計を手に入れることであるわけです。

自立=存在 自律=行動どこに向かい、何を成し遂げるか。
何を目的とし、そのために何を目標とするのか。
自ら律して行動を促し、その積み重ねによってビジョンを実現していく。
やり方を通して、結果、あり方を構築する。

「自立」が「存在」、つまり、「あり方」を示す。
「自律」が「行動」、つまり、「やり方」を示す。

これが、私の結論であり、冒頭で申し上げて、ウダウダと引っ張ってきた「ズバリ」の正体です。

 

まとめ

「自助論」という古典的名著があります。1858年に出版されて以来、日本では福澤諭吉の「学問のすすめ」と並んで読まれたという明治の大ベストセラーです。

天は自ら助くる者を助く

作者のスマイルズは、独立自尊の精神をこう表現し、多くの人々に影響を与えました。彼はこの言葉の意図するところを以下のように言っています。

外部からの援助は人を弱くします。自分で自分を助けようとする精神こそが、その人自身を奮い立たせるのです。ですので、良かれと思って援助の手をさしのべても、相手の自立心を失わせることがあります。保護や抑制も度がすぎると、役に立たない無気力な人間をつくる事になるのです

 

中国史上初めて全国統一を成し遂げ、「皇帝」を最初に名乗った秦の始皇帝は、ルールに溺れて国を滅ぼしました。「自律」を目論み、過度な統制やコントロールを行えば、「自立」が阻まれることを歴史は証明してくれています。

 

「自律」とは、他から支配されることなく、
自分自身が支配、統制すること

人が人である限り、必ずと言って良いほど外部に支配されることになります。

法律やルール、政治や経済、会社組織や地域社会、宗教にだって、世の中、探そうと思えば不自由な環境や世界はいくらでも存在します。ですので、それに不満を持つ人は多いことでしょう。

しかし、そんな環境の中にあっても、少しでも自由を謳歌したければ、自らが「自律」することです。主体性をもって、他から支配されることなく、自らを内側から支配することです。

 

「自立」とは、他に頼ることなく、
自分自身が信じ頼れる存在であること

自らを信じ、自分自身を拠り所とできる人となることで、自由を感じることができるようになります。

誰かと違う私でいいし、私は私のままでいい。そのように考えられると人間はもっと楽に力強く生きられるようになります。比較や評価や世間体に生きず、自分のありのままを許し受け入れることができると、人として力強く生きることができるのです。

そして、結果的に、自分が自分を認めることで「自立」は進み、自由を手に入れることができるのです。

 

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